コーヒー品種図鑑
同じアラビカ種でも品種によって風味は大きく異なります。主要な品種(バラエタル)を解説します。
ティピカ
Typica
発見・育成
17世紀
適正標高
1,000–2,000m
アラビカ種の原型とされる品種。低収量だが非常に高品質。長い豆が特徴で、繊細でクリーンな風味を持つ。ブルーマウンテン(ジャマイカ)の主体品種。
フレーバー特徴
主な生産国
ジャマイカ · パプアニューギニア · ペルー · メキシコ
コーヒーの世界的普及の「母」となった品種。オランダ人がイエメンから持ち出し、ヨーロッパ、インド、そしてアメリカ大陸へと広まった。
ブルボン
Bourbon
発見・育成
18世紀初頭
適正標高
1,000–2,000m
ティピカから自然突然変異した品種。収量はティピカより多いが、スペシャルティ品質を維持。赤・黄・ピンクのカラーバリエーションがある。
フレーバー特徴
主な生産国
コロンビア · エルサルバドル · ブラジル · ルワンダ
島の名前(現レユニオン島)がそのまま品種名に。ルワンダとブルンジの高品質コーヒー復興の中心的品種として知られる。
ゲイシャ / ゲシャ
Geisha / Gesha
発見・育成
1931年(発見)/ 2004年(注目)
適正標高
1,500–2,200m
世界で最も高値がつくコーヒー品種の一つ。エチオピアのゲシャ村原産。2004年のBest of Panamaオークションで世界に知れ渡り、革命を起こした。
フレーバー特徴
主な生産国
パナマ · コロンビア · コスタリカ · エチオピア
2021年のオークションで1ポンド約2,000ドル(約22万円)という記録的な価格がついた。日本の「芸者」とは無関係。
SL28
SL28
発見・育成
1930年代(Scott Laboratories選抜)
適正標高
1,500–2,100m
ケニアのスコット研究所が選抜。乾燥に強く、ケニアを代表する品種。ブラックカラントのような鮮烈な酸味が特徴で、ケニアコーヒー独特の風味の源。
フレーバー特徴
主な生産国
ケニア · ウガンダ · タンザニア
「SL」はScott Laboratoriesの略。同じく選抜されたSL34とともに、ケニアコーヒーの品質を世界最高水準に引き上げた立役者。
カトゥーラ
Caturra
発見・育成
1937年
適正標高
800–1,800m
ブルボンのドワーフ(矮性)突然変異種。木が小さく密植可能で収量が多い。中米・南米で広く栽培される。最も栽培される品種の一つ。
フレーバー特徴
主な生産国
コロンビア · コスタリカ · ホンジュラス · グアテマラ
「カトゥーラ」はブラジルのポルトガル語で「小さな植物」の意味。コロンビアのスペシャルティコーヒーの約40%がカトゥーラから作られる。
カトゥアイ
Catuai
発見・育成
1949年
適正標高
700–1,700m
ブラジル農業研究所が開発。耐風性・高収量が特徴。赤カトゥアイと黄カトゥアイがある。ブラジルで最も栽培される品種の一つ。
フレーバー特徴
主な生産国
ブラジル · コスタリカ · グアテマラ · ホンジュラス
「カトゥアイ」はグアラニー語で「非常に良い」という意味。ブラジルの大規模農園で機械収穫に適した品種として重宝されている。
パカマラ
Pacamara
発見・育成
1958年
適正標高
1,200–1,900m
エルサルバドルが生んだ交配品種。マラゴジッペゆずりの大粒の豆が特徴。フローラルかつチョコレートの複雑さを持ち、スペシャルティ市場で高評価。
フレーバー特徴
主な生産国
エルサルバドル · ホンジュラス · グアテマラ · ニカラグア
豆が非常に大きく「象の豆」とも呼ばれるマラゴジッペの血を引く。カップクオリティの高さからパナマのゲイシャに次ぐ注目品種とも言われる。
マラゴジッペ
Maragogipe
発見・育成
1870年代
適正標高
600–1,500m
「象の豆」と呼ばれる世界最大のコーヒー豆。収量が極めて少ないため希少。マイルドで繊細な風味は好みが分かれる。視覚的インパクトは絶大。
フレーバー特徴
主な生産国
ブラジル · グアテマラ · メキシコ · ニカラグア
ブラジルのマラゴジッペ市で発見。豆が通常の3倍近いサイズになる。収量が少ないため商業的にはほぼ見かけないが、希少性から高値で取引される。
カスティージョ
Castillo
発見・育成
2005年(普及)
適正標高
1,200–2,000m
コロンビア国立コーヒー研究センター(Cenicafé)が開発。コーヒーさび病(CLR)への高い耐性が最大の特徴。コロンビアで広く普及している。
フレーバー特徴
主な生産国
コロンビア
コーヒーさび病によって多くのコロンビア農園が壊滅的被害を受けた際、カスティージョが救世主となった。現在コロンビア生産量の約3割を占める。
ロブスタ(カネフォラ)
Robusta / Canephora
発見・育成
19世紀末
適正標高
0–800m
アラビカに次ぐ第2の主要種。カフェイン含有量がアラビカの約2倍。病害虫に強く低地でも栽培可能。エスプレッソブレンドのクレマ増強に不可欠。
フレーバー特徴
主な生産国
ベトナム · ウガンダ · ブラジル · インドネシア · インド
世界のコーヒー生産量の約40%を占める。インスタントコーヒーの主原料。ベトナムがロブスタ最大の輸出国で、世界シェア約40%を占める。
ハイブリッドティモール
Hybrid Timor (HdT)
発見・育成
1920年代
適正標高
800–1,800m
アラビカとロブスタの自然交配種。さび病への強い耐性をアラビカ系品種に付与するための育種素材として重要。単体での風味評価は低いが、育種に不可欠。
フレーバー特徴
主な生産国
ティモール · コロンビア(育種用) · コスタリカ(育種用)
カスティージョ、サルチモール、コロンビアなど多くの病害虫耐性品種の「親」として機能。直接飲まれることは少ないが、影響範囲は計り知れない。